薬や化粧品の成分表記には、有効成分と思われる名称が載っていますね。これら成分の由来は、ぱっと見ただけでは判りませんが、どのようなものなのでしょうか。
もともと薬や化粧品には、植物を利用したものが使われてきた歴史があります。古代エジプト時代の紀元前1700年頃にかかれたパピルスの書には、既に700種類のハーブが記録されていたそうです。アロエなどの植物を直接貼ったり、うがい薬として利用するなどして生活に取り入れることで、何らかの効果を体現的に知っていたのですね。
その後、インドのアーユルヴェーダや中国の漢方、ヨーロッパのハーブ療法や古代ペルシャで発展したユナニ医学など、各地で天然植物を利用した療法が確立されてゆきましたが、化学が発展した現代においては、このような伝統療法はすっかり影が薄れてしまいました。
はじまりは植物でも・・?
現代では、その植物の有効成分に着目して、同じ成分を化学合成によって作られるようになりました。化学式も一緒です。安価に大量に作れるので、化学合成物質は多く利用されています。
そこで出てくる疑問なのですが、植物の成分でも、石油由来でも、物質名が同じならば、全く同じものなのでしょうか。
例えば、グリセリンには石油由来と植物由来があります。どちらもエモリエント(保湿)効果という点では同じ結果が得られますが、まったく同じものと言われても、何か腑に落ちません。
成分にはまだ解明できていないものもある?
植物には化学で解明できていない成分も含め、抗酸化物質だけではなくさまざまな成分を含んでいます。構造式、官能基で表せないものも多くあるようです。
一方、化学合成のものには、検出できる限界を超えた何かが入っていたり、あるいは必要な何かが含まれなかったりする状態であり、それは解明されていない成分も多くあるようです。
問題が出てから判明することも?
「環境ホルモン」が社会問題になってから久しくなりますが、当初環境ホルモンが問題にならなかったのは、ヒトの科学力が足りず、検出できる量を下回る量しか含まれていなかったからです。この場合、様々な異常が出たことをきっかけに、いろいろと調べていってやっと問題が判明しました。
同じようなことはどこにでもあって、人間が計ることができないだけで、生物はその微妙な違いに気がつき、問題が起きているのではないかと思います。その結果のひとつがアトピーであり、数々のアレルギーといえないでしょうか。
自然物と人工物には違いがあるはず?
表題にもなっている、石油由来などの化学合成物の成分と植物の成分とでは、同じ成分名であれば、同じなのか?という疑問をすっきり解決できる結論はなかなか出て来ません。しかし計算上の構造が同じであっても、実際には本当に微妙な量が違う可能性が高く、同じとはいえないのではないかと思います。
難しく化学式で表すと「一緒ですね」となるかもしれませんが、それは今時点で判る範囲での判断であって、もっと計測技術が発展した未来では、やっぱり違いました。という結果になる可能性もあるのです。
自然物と人工物とでは、いくら似ていても、違うもの。というごく普通の感覚を大切にしたいですね。